大阪地裁(平成17年9月26日)“育毛剤事件”は、「被告がK7に6−BAP(サイト注:育毛剤の有効成分)を販売しており、同社が製造した育毛剤のうち、K8に輸出するサイトマックスについて、製品1本当たり165円のライセンス料を同社が被告に支払っている」、「このライセンス料は、被告が本件特許権を有していることによって得られるものであると認められるから、相当の対価の額を算定するにあたって考慮すべき、被告が受けるべき利益にあたるというべきである」、「被告がK7から受けたライセンス料収入のうち、平成16年5月期(平成15年6月ないし平成16年5月。以下『5月期』というときはこれと同様である。)まで及び平成17年5月期のうち平成17年2月までの金額については、・・・・当事者間に争いがない。このうち、平成16年5月期までのライセンス料収入の合計額は、9887万2000円である」、「サイトマックスのライセンス料収入の今後(サイト注:平成17年3月以降)の見通しについて、原告らは、今後も従前とほぼ同等の輸入数量が見込まれるから、ライセンス料収入も同様であると主張する。これに対し、被告は、平成17年5月期にK7が作りだめをするために大量に6−BAPを購入したのであるから、次年度以降は6−BAPの供給量も大幅に減少し、ライセンス料収入も大幅に減少するであろうし、その後も、通常、育毛剤のライフサイクルは最大発売後7年程度とされているので、前年度の70パーセントとなるように減少すると主張する。そこで検討するに、被告の上記主張のうち、現実の6−BAPの販売数量はともかく、その増減の理由や、育毛剤のライフサイクル等についての主張は、いずれもこれを裏付ける証拠のない、被告の推測ないし意見にすぎないものであって、直ちにこれを採用することはできない。かといって、一般に、ある製品が相当長期間にわたって同等の販売量を維持することができるとは限らず、これが増加する可能性も全くないわけではないが、むしろ、競争力を持った競合品が出現し、これによって従来製品の販売量が低下する可能性の方が、期間が長くなるにしたがって増加するものということができるし、販売元の事情や、有力な競合品が出現することにより、従来製品の販売を取り止めることすらあり得るものであるから(例えば、K5は、イノベート(サイト注:他のライセンシーによるサイトマックスの競合品)の販売開始に伴って、従来製品である育毛剤の販売を中止しようとしたことが・・・・認められる。)、原告らの上記主張も採用することができず、サイトマックスについて、今後も従前とほぼ同等の輸入数量を維持できるとまで認めることはできない。そして、本件において他に今後の見通しについて推定するに足りる証拠や事情がない以上、上記事情に鑑みて、K7からのライセンス料収入については、平成17年5月期は、平成16年6月ないし平成17年2月までのライセンス料収入に基づいてこれを推計し、平成16年5月期及び平成17年5月期の2年間の平均値を基準額として、平成18年5月期及び平成19年5月期はそれぞれこの60パーセント、平成20年5月期ないし平成24年5月期はそれぞれ基準額の50パーセント、それ以降の期間(平成25年5月期のうち平成24年6月1日から同年8月11日(サイト注:本件特許権の存続期間の満了日)まで)は、基準額の8パーセント(基準額の50パーセントを1年分とし、そのうち2か月分。ただし、1パーセント未満切捨て。)のライセンス料収入が見込まれるものと推定するのが合理的である・・・・。これを前提として算出するに、まず、平成17年5月期のうち平成16年6月ないし平成17年2月までのライセンス料収入は1270万8000円であったのであるから、平成17年5月期のライセンス料収入は、下記の計算式@のとおり、1694万4000円と推計される。次に、平成16年5月期のライセンス料収入は、1530万8000円であるから、同年5月期と平成17年5月期のライセンス料収入との平均値(基準値)は、1612万6000円となる。したがって、平成18年5月期以降のライセンス料収入の見込額は、平成18年5月期及び平成19年5月期は、それぞれ上記基準額の60パーセントに相当する967万5600円、平成20年5月期から平成24年5月期までは、それぞれ上記基準額の50パーセントに相当する806万3000円、それ以降の期間は、上記基準額の8パーセントに相当する129万0080円となる。以上を総合すると、平成17年5月期以降のライセンス収入見込額の合計額は、下記の計算式Aのとおり、7790万0280円となる」、「計算式@ 12,708,000÷9×12=16,944,000」、「計算式A 16,944,000+9,675,600×2+8,063,000×5+1,290,080=77,900,280」、「以上を合計すると、サイトマックスについて、被告がK7から受けるべきライセンス料の見込額は、1億7677万2280円(サイト注:9887万2000円+7790万0280円)となる」と述べている。 |