知財高裁(平成8年5日)“画像撮影装置事件特許法(以下、単に『法』ともいう9条の2における『出願公開』という要件は、後願の出願後(当該特許出願後)に先願(当該特許出願の日前の他の特許出願)についての『出願公開』がされれば足りるのであり、後願の査定時に未だ先願の出願公開がされていない場合には、担当の審査官が先願の存在をたまたま知り得たとしても、その時点で査定をする限り、特許査定をしなければならないが、その後にその先願の出願公開がされたときは、法9条の2所定の『出願公開』の要件を満たし、法123条1項2号に該当するものとして特許無効審判を請求することができるものと解するのが相当である」、「仮に、後願(当該特許出願)についての特許査定時までに先願の出願公開がされていない場合には、その後にその出願公開がされたとしても法9条の2の適用の余地はないと解するならば、不当な結果となる。そもそも、特許査定の時期は、審査請求をどの時点でするか、審査手続がどのように進行するかなど、個別事案ごとに種々の要素に左右されるものであり、出願公開の時期も、出願人が出願公開の請求をどの時点でするか、法4条1項前段の出願公開についても事務手続がどのように進むかなど、これも個別事案ごとに種々の要素に左右されるものであり、両者の先後関係は、多分に偶然の要素に左右されることは、制度上自明のことである。このような偶然の要素によって特許要件の充足性を左右させることは、特許制度を不安定かつ予測困難なものとするものであって、特許法の予定するものでないと解される」と述べている。

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