知財高裁(平成18年1月25日)“医療検査用カセット事件”は、「原告は、本件が『不適法な審判請求であって、その補正をすることができないもの』であるかどうかについて、原告に意見を申し立てる機会を与えなければならないのに、被告は、その機会を与えることなく、審判請求却下の審決をしたから、審判手続には憲法上認められた原告の権利を侵害した瑕疵があると主張する。実用新案法41条によって準用される特許法135条の規定は、『不適法な審判の請求であって、その補正をすることができないものについては、被請求人に答弁書を提出する機会を与えないで、審決をもってこれを却下することができる。』と規定しているが、この規定により審判の請求を却下しようとするときに、請求人に意見を申し立てる機会を与えなければならない旨の規定はない。そして、上記規定により審判の請求を却下しようとするときに、補正をすることができないものについてまでも、必ず請求人に意見申立ての機会を与えなければならないものと解することは、実益に乏しい上、上記規定が、『被請求人に答弁書を提出する機会を与えないで、』と簡易迅速に審判請求を却下することができるようにした趣旨に照らして、相当でない。また、審判請求を却下した審決に不服がある請求人は訴えを提起することができるのであるから、補正をすることができないものについて、意見申立ての機会を与えることなく却下しても、請求人に実質的な不利益は生じないということができる。そうであれば、不適法な審判の請求であって、その補正をすることができないものについては、請求人に意見を申し立てる機会を与えないで、これを却下することができると解される。したがって、本件において、原告に意見申立ての機会を与えなかったとしても、手続保障に欠けるところはなく、憲法上認められた原告の権利を侵害するものとはいえないのであって、審判手続には瑕疵がない」と述べている。 |