知財高裁(平成8年0月1日)“接触器を保護した電気車輌の駆動列事件原告は、乙第1号証記載の技術は、電気車輌用の電力変換装置に関するものではなく、当該技術分野の当業者に周知ではなかったとするが、仮に、乙第1号証の特許請求の範囲に記載された技術そのものが、電気車輌用の電力変換装置に関する技術分野の当業者に周知ではなかったとしても、当該技術の前提である、突入電流発生の機序、及びその防止に関する、予備回路によりあらかじめ容量性負荷を十分に充電しておくという程度の一般的な技術手段自体は、これと全く同一の問題を抱える電気車輌用の電力変換装置に関する技術分野の当業者にも周知であったと認められるから、上記主張を採用することはできない」、原告は、・・・・引用発明2は、電池電圧がさほど変動しない電源技術の分野に属する技術であるのに対して、引用発明1は、電池電圧が大きく変動する電気車輌の牽引用蓄電池に関する技術分野に属するから、引用発明1と引用発明2とは技術分野が異なると主張する。しかしながら、・・・・引用発明2は、直流電源から容量性負荷に電力を供給する回路において、電源と負荷との間に挿入されたスイッチをオンにしたときに発生する突入電流(サージ電流)を抑え、スイッチを構成する接点や半導体素子の劣化もしくは最大定格オーバによる破壊等の問題を解消できるようにしたスイッチ保護回路の発明であることが認められるところ、このことは、このような突入電力の発生防止の課題が、直流電源から容量性負荷に電力を供給する回路を用いる各技術分野に共通した課題であることをも示すものであり・・・・、当該課題との関係においては、電気車輌の牽引用蓄電池に関する分野も、上記のような電力供給回路の分野における一応用分野であるというにすぎない。・・・・電源電圧が変動するか否かは、課題の共通性に影響を及ぼすような本質的な相違ということはできない。そうであれば、引用発明1、2とも、上記のような電力供給回路の共通した分野に関するものというべきである」と述べている。

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