最高裁(平成8年0月7日)“光学的情報処理装置事件「外国の特許を受ける権利の譲渡に伴って譲渡人が譲受人に対しその対価を請求できるかどうか、その対価の額はいくらであるかなどの特許を受ける権利の譲渡の対価に関する問題は、譲渡の当事者がどのような債権債務を有するのかという問題にほかならず、譲渡当事者間における譲渡の原因関係である契約その他の債権的法律行為の効力の問題であると解されるから、その準拠法は、法例7条1項の規定により、第1次的には当事者の意思に従って定められると解するのが相当である」、「本件において、上告人と被上告人との間には、本件譲渡契約の成立及び効力につきその準拠法を我が国の法律とする旨の黙示の合意が存在するというのであるから、被上告人が上告人に対して外国の特許を受ける権利を含めてその譲渡の対価を請求できるかどうかなど、本件譲渡契約に基づく特許を受ける権利の譲渡の対価に関する問題については、我が国の法律が準拠法となるというべきである」、「我が国の特許法が外国の特許又は特許を受ける権利について直接規律するものではないことは明らかであり(・・・・パリ条約4条の2参照、特許法5条1項及び2項にいう『特許を受ける権利』が我が国の特許を受ける権利を指すものと解さざるを得ないことなどに照らし、同条3項(サイト注:現4項)にいう『特許を受ける権利』についてのみ外国の特許を受ける権利が含まれると解することは、文理上困難であって、外国の特許を受ける権利の譲渡に伴う対価の請求について同項及び同条4項(注:平成7年4月1日改正前の旧4項(サイト注:現7項)の規定を直接適用することはできないといわざるを得ない。しかしながら、同条3項及び4項の規定は、職務発明の独占的な実施に係る権利が処分される場合において、職務発明が雇用関係や使用関係に基づいてされたものであるために、当該発明をした従業者等と使用者等とが対等の立場で取引をすることが困難であることにかんがみ、その処分時において、当該権利を取得した使用者等が当該発明の実施を独占することによって得られると客観的に見込まれる利益のうち、同条4項所定の基準に従って定められる一定範囲の金額について、これを当該発明をした従業者等において確保できるようにして当該発明をした従業者等を保護し、もって発明を奨励し、産業の発展に寄与するという特許法の目的を実現することを趣旨とするものであると解するのが相当であるところ、当該発明をした従業者等から使用者等への特許を受ける権利の承継について両当事者が対等の立場で取引をすることが困難であるという点は、その対象が我が国の特許を受ける権利である場合と外国の特許を受ける権利である場合とで何ら異なるものではない。そして、特許を受ける権利は、各国ごとに別個の権利として観念し得るものであるが、その基となる発明は、共通する1つの技術的創作活動の成果であり、さらに、職務発明とされる発明については、その基となる雇用関係等も同一であって、これに係る各国の特許を受ける権利は、社会的事実としては、実質的に1個と評価される同一の発明から生じるものであるということができる。また、当該発明をした従業者等から使用者等への特許を受ける権利の承継については、実際上、その承継の時点において、どの国に特許出願をするのか、あるいは、そもそも特許出願をすることなく、いわゆるノウハウとして秘匿するのか、特許出願をした場合に特許が付与されるかどうかなどの点がいまだ確定していないことが多く、我が国の特許を受ける権利と共に外国の特許を受ける権利が包括的に承継されるということも少なくない。ここでいう外国の特許を受ける権利には、我が国の特許を受ける権利と必ずしも同一の概念とはいえないものもあり得るが、このようなものも含めて、当該発明については、使用者等にその権利があることを認めることによって当該発明をした従業者等と使用者等との間の当該発明に関する法律関係を一元的に処理しようというのが、当事者の通常の意思であると解される。そうすると、同条3項及び4項の規定については、その趣旨を外国の特許を受ける権利にも及ぼすべき状況が存在するというべきである。したがって、従業者等が特許法5条1項所定の職務発明に係る外国の特許を受ける権利を使用者等に譲渡した場合において、当該外国の特許を受ける権利の譲渡に伴う対価請求については、同条3項及び4項の規定が類推適用されると解するのが相当である」と述べている。

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