知財高裁(平成18年3月8日)“非水電解液二次電池事件”は、「原告は、・・・・@ ピッチコークス以外の炭素質材料を用いた場合、A 電池を角型とした場合には、本件明細書の発明の詳細な説明の記載に基づいて本件発明を実施することができないと主張する」、「本件明細書の発明の詳細な説明の項には、本件発明の実施例として、炭素質材料の代表例であるピッチコークスを用いた具体例が記載されており、本件発明で特定された膜厚の範囲内のものが好適な効果を奏することが示されている。そうすると、実施例以外の炭素質材料を用いて本件発明の膜厚の範囲内の電池を製作する場合、当業者は、本件発明の詳細な説明及び周知技術に基づいて、必要な諸条件を適宜選択することができるというべきである。例えば、原告主張のように黒鉛と実施例に用いられた電解液との組合せに問題があるのであれば、当業者に周知の別の電解液等の既に知られた諸条件の範囲内で適したものを採用すれば足りるのであって・・・・、そのことが当業者にとって過度の試行錯誤を伴うものであり、本件発明の実施を不可能にすると認めることはできない。したがって、ピッチコークス以外の炭素質材料を用いる場合についての原告の主張は失当というべきである」、「本件明細書の発明の詳細な説明の項には、本件発明の実施例として、その構成要件を満たす円筒型の電池を製造したことが記載されており・・・・、その製造条件も具体的に記載されているから、当業者であれば、本件発明を実施する方法を容易に理解することができるものである。原告が主張する角型電池は、上記実施例以外の形状であるが、そのような場合であっても、当業者であれば、本件明細書の記載に基づきつつ、形状の相違に応じて製作上の工夫を適宜行うことによって、本件発明の作用効果を奏する二次電池を作成することが可能であると認められる・・・・。したがって、角型の電池容器を用いる場合についても、原告の主張を採用することはできない」と述べている。 |