東京地裁(平成18年5月29日)“印字装置事件”は、「本件のように、勤務規則等において、相当の対価につき、特許権の存続期間中、一定の期間ごとに特許発明の実施の実績に応じた額を使用者等から従業者等に支払う旨の定めがされている場合には、相当の対価のうち、各期間における特許発明の実施に対応する分については、それぞれ当該期間の特許発明の実施の実績に応じた額の支払時期が到来するまでその支払を求めることができないのであるから、各期間の特許発明の実施の実績に応じた額の支払時期が、相当の対価の支払を受ける権利のうち、当該期間における特許発明の実施に対応する分の消滅時効の起算点となると解するのが相当である」、「原告は、・・・・相当の対価の請求権は、実体法上1個の請求権であり、『使用者等が受けるべき利益』は特許を受ける権利の承継の時において一定の額として算定し得るものであるから、ある一定期間に対応する相当の対価の請求権というものは観念し得ず、相当の対価の請求権の消滅時効は、ある一定の時点から一体として進行すると主張する。しかし、実体法上1個の請求権を部分に分け、その各部の支払時期を異なるものとすることができることは明らかであり、その場合における支払時期の定めは、対応する部分についての権利行使における法律上の障害となるのであるから、消滅時効は、各部分について、各支払時期から進行することも明らかである。また、相当の対価のうち、ある一定期間の特許発明の実施に対応する部分を観念できないとする合理的理由はない」と述べている。 |