東京地裁(平成8年59日)“印字装置事件本件各発明に係る特許を受ける権利の譲渡の『相当の対価』の額(平成5年度から平成0年度までの期間における特許発明の実施に対応する分に限る)の合計は、被告が受けるべき利益の額4931万1435円から被告が貢献した程度0%を控除した1479万3430円となる(円未満切り捨て9,311,435円×(1−0.7)=,79,430円」、「被告は、原告に対し、原告と同時期に入社した同年代の従業員に比して合計約1400万円の特別の待遇を行ったから、この額は『相当の対価』に含まれると主張する。しかし、給与等が、原告と同時期に入社した同年代の従業員に比して高額であったとしても、それは,原告の行う労務を評価した上でのこれに対する対価であって、本件各発明の対価とは到底認められない。また、原告が平成2年に被告を退職した後、被告が、特別契約社員として原告を採用し、人事上厚遇した上で比較的高額な給与を支払ったことも、同様に労務の対価であって、本件各発明の対価といえないことは明らかである。原告や他の従業員に支払われる労務の対価が、提供され、又は提供されることが期待される労務の質及び量によって変動するのは、むしろ当然であり、原告と同時期に入社した同年代の従業員の給与に比して、原告の給与が高額であったことは、原告が提供し、又は提供することが期待された労務の質及び量が原告と同時期に入社した同年代の従業員に比して優れていたことを意味するのであって、被告が本件各発明の対価を支払ったことを意味するものではない。この点も、上記のとおり、使用者等による待遇面における貢献の程度として考慮されるにとどまるというべきである。したがって、被告の上記主張は、採用することができない」と述べている。

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