東京地裁(平成18年6月8日)“半導体不揮発性記憶装置の書き込み及び消去方法事件”は、「特許権者が単数又は複数の特許について競業他社とライセンス契約を締結した場合、当該契約により得られる実施料収入は、当該特許に基づいて使用者が得る独占の利益であるというべきであるから、これを特許法35条4項(サイト注:現7項)の『その発明により使用者が得ることができる利益の額』とみることができる。もっとも、複数の特許発明がライセンス(実施許諾)の対象となっている場合には、当該発明により『使用者が受けるべき利益の額』を算定するに当たっては、当該発明が当該ライセンス契約締結に寄与した程度を考慮すべきである。被告は、D社との間で、本件第1特許を含む12件の特許についてライセンス契約を締結しており、これによりD社から1億5000万円の実施料収入を得ている・・・・。したがって、被告が同ライセンス契約において、本件第1特許発明により得た利益の額は、同発明がライセンス契約締結に寄与した程度を考慮して決定すべきである」、「D社ラインセンス契約においては、本件第1特許を含む12件の特許が対象特許とされている。本件第1特許発明の技術的範囲が特定の構成及び方法のものに限定されていること、及び、D社との交渉においては、実施料について合意が成立した第9回交渉において初めて本件第1特許が提示されたにすぎないものであること、並びに、被告がD社の製品を入手して本件第1特許に抵触するものと判断したわけではないこと・・・・からすれば、同特許がD社ライセンス契約の締結に高く貢献したものということはできない。そして、被告においては、当該ライセンス契約について交渉を担当した知的財産部門担当者が、各対象特許の貢献度をそれぞれ判定した上で、他社実績補償の金額を算定しているのであること、及び、被告は、D社ライセンス契約における本件第1特許の貢献度を、上記各事情を考慮して、562分の25であると評価していること、並びに、上記各評価は、原告と被告間で本件各特許等の相当の対価について争いが生じる以前になされたものであること・・・・からすれば、被告によるこの評価は、特段の事情がない限り、被告の知的財産部門担当者が、すべての代表特許を総合的な事情を考慮して客観的に判定して算出したものであり、相当なものであるということができる。したがって、本件第1特許の貢献度については、被告による評価である562分の25の貢献度を有するものとして、相当の対価を算定することとする」、「被告は、ライセンス交渉において必要とされた費用(実施料の4分の1)については控除すべきであるとも主張する。しかし、ライセンス契約締結交渉に必要な費用が実施料の4分の1であることを認めるに足りる証拠はない。ただし、ライセンス契約締結交渉において一定の範囲で必要な費用が生じることは否定できないことであるから、これについては、当該特許発明における『使用者等が貢献した程度』(35条4項)を算定する際の一事情として斟酌することにする」と述べている。 |