知財高裁(平成8年92日)“携帯用コンピュータ用平板表示装置事件「特許法159条2項は、拒絶査定不服審判において査定の理由と異なる拒絶の理由を発見した場合には、同法0条の規定を準用し、拒絶査定不服審判請求を不成立とする審決をしようとするときは、特許出願人に対し、拒絶の理由を通知し、相当の期間を指定して、意見書を提出する機会を与えなければならないと規定している。この規定の趣旨は、審査手続において通知した拒絶理由によって出願を拒絶することは相当でないが、拒絶理由とは異なる理由によって拒絶するのが相当と認められる場合には、出願人が当該異なる理由については意見書を提出していないか又は補正の機会を与えられていないことが通常であることにかんがみ、出願人に対し改めて意見書の提出及び補正の機会を与えることにあるものと解される。また、同法158条により、審査においてした手続は、拒絶査定不服審判においても、その効力を有し、審査官がした拒絶理由通知は、審判手続においても効力があり、出願人が提出した意見書及び補正書も審判手続において効力を有する。これらのことを併せ考えると、拒絶査定と異なる理由による審決をする場合であっても、審決の理由が既に通知してある拒絶理由と同趣旨のものであり、出願人に対し意見書の提出及び補正の機会が実質的に与えられていたときは、改めて拒絶理由が通知されなかったことをもって、特許法159条2項において準用する同法0条の規定に違反する違法があるとまではいえないと解するのが相当である」と述べている。

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