東京地裁(平成18年9月27日)“殺虫剤組成物事件”は、「法112条の2第1項所定の『その責めに帰することができない理由』とは、次の理由から、これと同一の文言である法121条2項(拒絶査定不服審判の追完)、法173条2項(再審請求の追完)所定の『その責めに帰することができない理由』と同様、天災地変又は通常の注意力を有する当事者が万全の注意を払ってもなお追納期間内に納付できなかった場合を意味するものと解するのが相当である」、「法112条の2は、・・・・例外的な救済の制度である。また、訴訟行為の追完を定めた民訴法97条1項の『その責めに帰することができない理由』については、過失がある場合を含まないとの解釈が採られている。さらに、『その責めに帰することができない理由』という文言の通常の意味からすると、過失がある場合を含まないと解釈するのが自然である」、「CPAの担当者であるAは、原告から追納期間の満了日が近づいていた時期に本件特許料等の納付指示を受けていたにもかかわらず、CPAを退職するに当たり、ドイツオフィスの責任者から緊急の案件の有無を問い質された際にもこれを伝えなかったものであるから、CPAの担当者であるAに過失があったことは明らかである」、「さらに、・・・・CPAは、年金管理及び納付事務を専門としている機関であり、我が国における特許料の納付についての事務を受任したのであるから、一部の従業員の退職や欠勤によって業務に停滞を来さないような組織態勢をあらかじめ構築すべき善管注意義務を有していたである。また、CPAは、担当者の退職に際し、特許料納付事務の引継ぎに漏れがないか否かについて十分確認すべき義務を有してたものである。ところが、CPAドイツオフィスの責任者は、Aの勤務状態に問題があることが顕在化し、事務の引継ぎをしないまま退職し、後任者の調査によりAの未処理案件は当初予想していたよりもはるかに多いことが判明したにもかかわらず、特許料納付事務の引継ぎに漏れがないか否かについて十分確認せず、しかも、十分な人員の補充をしないまま、顧客サービス管理チームにAから引き継いだ業務の処理をさせていたものであるから、CPAに過失があったことは明らかである。そして、Aの退職の日から特許料追納期間の満了日までに18日程度あったものであるから、CPAが上記に説示した義務に従い、適切に組織態勢を構築し、特許料納付事務の引継ぎに漏れがないか否かについて十分確認していれば、特許料追納期間の満了日を徒過することはなかったものと認められる」、「そして、特許料の納付に関する管理は、特許権者が自ら行うのか、外部に委託するのか、委託するのであれば誰に委託するのか等を含め、すべて特許権者の自己責任の下に行われることであるから、特許権者から委託を受けて特許管理を行っていた独立の外部事業者であるCPAの過失は、特許権者である原告の過失と同視されるものである」、「以上のとおり、法定の追納期間内に本件特許料等を納付をしなかったことにつき、原告に法112条の2第1項所定の『その責めに帰することができない理由』が存在しないから、本件却下処分に違法はない」と述べている。 |