大阪地裁(平成19年10月30日)“既設コンクリート杭の撤去装置事件”は、「被告は、本件特許発明2装置を生産し、又は譲渡することによって利益を上げているわけではなく、同装置を使用して工事を行うことによって利益を上げているものである。したがって、被告が得た独占の利益の算定に当たっても、他社が施工する工事が本件特許発明2装置を使用するものである場合に、これを本件特許権2に基づいて禁止することによって得た超過売上高を基に独占の利益を算定するべきである」、「本件特許権2により競業他社に同特許発明の実施を禁止していることに起因する被告の超過売上高を検討する。・・・・本件特許発明2は、従来技術の改良発明である上に、代替的技術手段も存在する。その他、被告が、本件特許発明2により、長尺杭や、傾斜している杭の撤去工事の市場においていかなるシェアを占めているのか、他社がいかなる技術を有しているのかを示す的確な証拠はないが、・・・・被告は、長尺杭や傾斜している杭の撤去工事の市場において、特に優位な地位を保っているとまで認めることはできず、競合他社も、各社独自の技術でこれらの杭の撤去工事に従事しているものと推認することができる。また、・・・・本件特許発明2装置の使用に該当する工法の範囲は比較的狭く、しかも本件特許発明2の目的に沿っての使用は実用に耐え難いことに照らせば、あえて同特許発明の目的のために、同特許発明の実施許諾を得ようとしながらも被告からその許諾を得られず、本件特許権2が存在するために同特許発明の実施を禁止される競合他社が存在する割合は、低いと認めざるを得ない。上記事情に照らせば、被告が本件特許発明2の実施により得ていた超過売上高は、・・・・売上高(サイト注:本件特許発明2装置を使用した工事の売上高)のうちの20%と認めるのが相当である」、「上記超過売上高に基づいて、本件特許発明2についての被告の独占の利益を算定することとする。その方法としては、@被告が上記超過売上高から得る利益を算定する方法と、A被告が競合する第三者に本件特許発明2の実施を許諾した場合を想定して、その場合に得られることが予想される実施料収入により算定する方法が考えられる。本件においては、上記@の方法をとるのに必要な本件特許発明2を実施した工事における被告の利益率も不明であり、同方法を採用することはできない。そこで、Aの方法により、被告の独占の利益を算定することとする」、「前記のとおり、仮に被告が第三者に本件特許発明2の実施を許諾していれば、前記超過売上高(サイト注:本件特許発明2装置を使用した工事の売上高の誤りと思われる)のうち少なくとも20%に当たる工事は第三者により施工されていたものと認められる。そして、次に問題となるのが実施料率である。この点については、甲123(実施料率[第5版])によれば、建設技術分野におけるイニシャルなしの場合の実施料率の平均値は、3.5%であると認められること、本件特許発明2は、・・・・市場における優位性を見出すのが困難な特許発明であること、ケーシング伸縮機構かオーガ軸伸縮機構のいずれか一方のみを用いることは、本件特許権2の侵害とはならないこと等を考慮すると、第三者に実施許諾したと仮定した場合の実施料率は2%とするのが相当である」と述べている。 |