知財高裁(平成9年0月1日)“内燃機関用スパークプラグ事件被告は、平成7年2月2日、本件特許の請求項1ないし6に係る発明について、無効2005−80036号事件(進歩性欠如等に係る無効理由)及び無効2005−80037号事件(法6条4項の要件欠如に係る無効理由)の2つの特許無効審判を請求した。これに対して、特許庁は、各審判請求を併合審理した上、平成8年2月0日に審決をした。その審決書を見ると『第5 無効理由についての判断』欄において、@無効2005−80036号事件について、本件発明1ないし4、6には、進歩性欠如の無効理由が存在するが、本件発明5には進歩性欠如の無効理由は存在しない等の判断を示し、A無効2005−80037号事件について、本件発明1ないし6には、同法6条4項の要件を充足しないとの無効理由は存在しないとの判断が示されているものの『結論』欄においては『特許第2921524号の請求項1ないし4、6に係る発明についての特許を無効とする。特許第2921524号の請求項5に係る発明についての審判請求は、成り立たない』との記載がされただけである。以上の手続の経緯及び審決書の内容を総合して判断すると、本件無効審判事件の中、無効2005−80036号事件部分(進歩性欠如等に係る無効理由)は、原告から取消訴訟が提起されたことによって、当庁に係属するに至ったが、無効2005−80037号事件部分(法6条4項の要件欠如に係る無効理由)は、未だ、審決がされておらず、依然として特許庁に係属していると解するのが相当である。けだし、本件においては、審決書の結論である『特許第2921524号の請求項1ないし4、6に係る発明についての特許を無効とする。特許第2921524号の請求項5に係る発明についての審判請求は、成り立たない』について、無効2005−80036号及び無効2005−80037号事件の両事件に対するものと理解することは、審決の理由の内容に照らして採用の余地はない。また、無効2005−80037号事件につき『無効審判不成立』との黙示的な審決がされたと理解することも、法的関係を不安定にすること、及び被告(請求人)の不服申立ての機会を奪うこと等の理由から、到底採用の限りでない。したがって、本件審決書の『結論』は、無効2005−80036号事件のみに対するものと理解するのが相当である。すなわち、本件は審決の脱漏と解すべき筋合いといえる(民事訴訟法258条参照。この場合、脱漏審決に対して、そのことを理由として、取消訴訟を提起することができないことはいうまでもない。被告の請求した無効審判事件(無効2005−80037号事件)は、依然として、特許庁に係属していることになるから、追加審決又は無効審判請求の取下げなどによって、審判係属を終了させることを要する」と述べている。

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