知財高裁(平成9年1月3日)“エアバッグのための工業用織物事件請求項1の記載から『1m当たり5〜0』が『1m当たり5〜0個の結節』の意味であることが読み取れるものと仮定しても、本願明細書には、・・・・『結節』の個数の測定は、どのような方法・装置によって行うのか等が明らかとはいえず、請求項1の『多重繊維を空気で1m当たり5〜0絡み合わせた』との記載は、なお明確でないといわなければならない」、「この点につき、原告は『1m当たり5〜0』の『結節』すなわち『交絡』・・・・の個数の測定方法は『針法』によることが、その装置はロスチャイルド社製のものが一般的であって、そのことも当業者に周知であるから、請求項1が明確でないことはない旨主張する」、1997年(平成9年)に発行されGupta外著の教科書であるManufactured Fiber Technology(甲第0号証)には『フィラメント糸の交絡特性を決定するのに使用できる方法には様々なものがある。・・・・手動針法・・・・。・・・・自動針法・・・・。静電法・・・・。自動厚み測定・・・。』(訳文1頁1行〜9行)との記載があり(なお、この刊行物の発行日と本件出願に係る優先権主張日との先後関係は明らかではないが、仮に、本刊行物の発行が後であったとしても、上記優先権主張日との差は1年以内であり、かつ、本刊行物が教科書であることや、上記引用に係る記載事項の内容に照らすと、上記記載事項は、上記優先権主張日においても、妥当するものであったものと推認される。)、いずれも本件出願に係る優先権主張日前の文献である乙第2〜第3号証の各公報には様々な交絡度又は交絡数の測定方法が示されていることからすると、上記優先権主張日において、交絡度又は交絡数の測定方法について、何ら特定しなくても『針法』によると考えるのが一般的であると認めることはできない。また、測定装置についても、上記乙第2、第6、第1及び第3号証の各公報にはロスチャイルド社製以外の測定装置が記載されており、上記優先権主張日当時において、当業者が交絡度の測定装置として同社製のものを想定するのが技術常識であるということは到底できない。したがって、原告の上記主張は、・・・・失当である」、「以上によると、・・・・本件特許出願は特許法6条6項2号の要件を満たしていないとの審決の判断は正当である」と述べている。

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