東京地裁(平成19年2月28日)“高級脂肪酸金属塩ブロックの製造方法事件”は、「昭和55年2月2日の時点では、既に、Dらにより、型の下部から冷却するという本件発明の着想が得られていた上、遅くとも同月4日までには、下部を上部よりも相対的に冷却して、下部から上部に順次冷却固化する方法によって、リコーに納品する一定量のSZBを製造しているのであるから、当業者において、溶融状態にある高級脂肪酸金属塩であるステアリン酸亜鉛を、下部を上部よりも相対的に冷却することによって、下部から上部に順次冷却固化させる方法に基づいて、クラックを生じることなく、高級脂肪酸金属塩のブロック体を製造することが可能な状況にあったというべきであり、遅くとも同日までには、本件発明が完成されたということができる」、「原告は、昭和55年2月2日において、Dらの製造方法による製造では歩留り45%という生産性の極めて低い状態であったから、当業者がクラック発生のトラブルなくSZBを製造することは不可能である旨主張する。しかしながら、当業者が本件発明の方法に基づいて、クラックの発生なく、SZBを一定量製造することが可能であれば、物を製造する方法発明としては既に完成していると評価されるべきもので、工業的生産性が必ずしも十分ではないからといって、同評価が覆るものではない」、「さらに、本件発明においては、SZBを安定的に量産することまではその要素とされていないから、SZBの量産が遅れ、リコーに対する当初の納期が守れなかったからといって、本件発明が完成していないことになるものでもない」と述べている。 |