大阪地裁(平成19年3月27日)“ポリアミド溶融物のゲル化防止方法事件”は、「本件特許Rの明細書は実施可能要件を充足しておらず、本件特許Rには無効理由が存在するものと認められる」、「本件特許Jの明細書については、実施可能要件を充足せず、本件特許Jには無効理由が存在するものと認められる」、「無効理由がある特許について一律に独占の利益がないとまでいうことは相当ではないが、本件特許権Rに関しては、実施例を追試しさえすれば、無効理由の存在に気付き得るものであって、本件特許権Rが同業他社にとって無視できない存在であるならば、当業者として容易にその存在に気付き、異議あるいは無効審判請求を提起し、これによって特許が無効とされていたことが充分予想されるところである。また、本件特許権Jについても、同様に、同業他社にとって技術開発上無視できない存在であるならば、同業他社において数値限定の範囲内で追試することにより、出願当時の技術水準では実施することが困難であったことや、数値範囲内のいくつかの該当するブレンド成分を混合した樹脂を原材料として逐次二軸延伸フィルムを製造すれば、実験結果について同特許の明細書記載の効果を奏さないこと、あるいは同効果を奏するために必要な条件の記載がないことに容易に気付き、異議あるいは無効審判請求を提起し、これによって特許が無効とされていたことが推察されるところである。しかるに、本件特許R及び同Jについて同業他社が異議あるいは無効審判請求を提起するような措置をとった形跡はない。このことは、上記各特許がいずれも同業他社にとって無視し得るような特許であること、すなわち、・・・・同業他社において同各特許に抵触しない他の代替技術を用いて同等のナイロンフィルムを製造販売しており、本件発明R及び同Jを実施する必要を感じていなかったからであると推認させる」、「以上によれば、本件特許権J及び同Rにより、同業他社がその特許発明の実施を禁止されたことによって被告が得た独占の利益は、算定が極めて困難であり、これがN2100の売上げに占める割合を認定することも極めて困難である。よって、仮にN2100の製造方法が、本件発明J及び同Rの技術的範囲に属するとしても、それらの特許を受ける権利を譲渡したことによる相当の対価は、原告がこれまでに被告から受領した出願時奨励金及び登録奨励金の合計額を超えるものとは認められない」と述べている。 |