知財高裁(平成19年3月28日)“地震時ロック方法事件”は、「係止体が扉に当たるまでの距離及び扉が往復動可能に開く程度については、特許請求の範囲の記載において、『わずかに』とされるのみで、きわめて抽象的な表現であって、特許請求の範囲の他の記載を参酌しても、その内容が到底明らかになるものではない。技術常識によれば、扉のロック方法において、製造誤差、組付誤差が生じることがあるほかに、ロック状態を確実にするため、一定のいわゆる『遊び』が設けられることもあるのであるが、それらを『わずかに』との表現が含むのかは全く不明である。そして、本件明細書の発明の詳細な説明中にも、『わずかに』で表される程度を具体的に説明したり、その程度について示唆するような具体的な記載はない。加えて、係止体が『わずかに』開かれるまで当たらないこと・・・・による効果についても、本件明細書の発明の詳細な説明には、何ら記載されていない。そうすると、当業者にとって、その技術常識を勘案しても、本件発明1の『わずかに』で表される、係止体が扉に当たるまでの距離及び地震時に扉が往復動可能に開く程度の上限及び下限を理解することは、困難であるといわざるを得ない」、「本件発明1は、当業者にとって、その技術常識を勘案しても、係止体が扉に当たるまでの距離及び地震時に扉が往復動可能に開く程度を理解することは、困難であって、特許請求の範囲の記載が明確でないということができ、また、本件発明1を引用する本件発明2ないし4も、特許請求の範囲の記載が明確でないということができる。そうすると、本件明細書(サイト注:現特許請求の範囲)は、特許法旧36条6項2号に規定する記載要件を満たしていないのであるから、本件各発明に係る特許は、特許法123条1項4号に該当するものとして、無効とされるべきものであり、これと同旨の審決の判断に誤りはない」と述べている。 |