大阪地裁(平成9年49日)“ゴーグル事件「被告製品は、1個100円という通常では想定し難い価格を設定し、かつ、子供を対象とした商品であることを購買者に対する最大のセールスポイントとしたスイミングゴーグルであったということができる。このことからすると、成人が自ら使用するために購入するというよりは、親が子供のために購入することの多い製品であったものと認められる。他方、本件原告製品は、フィットネス用の製品としての基本性能に加えて、シリコーン素材を使用したり、度付きレンズと交換可能であるなどの付加的な機能も備えた中級品であることが認められる。以上のとおり、被告製品は、これまで市場で流通していたスイミングゴーグルと比較して圧倒的な低価格を実現したものであったため、その低価格ゆえに、本来、スイミングゴーグルを購入する意思のなかった購買者層を新たに開拓した面があることも否定できない。しかし、子供用のスイミングゴーグルの購買層の中には、被告製品が存在しなければ、それに代わるものとして、これまで市場に流通していたスイミングゴーグルを購入したであろう購買者層も存在したであろうことが推認される。そのような購買者は、従前スイミングゴーグルが販売されていたスポーツ用品店等において本件原告製品を含む従来商品を選択していたものと想定される。その場合、本件原告製品の本体価格は、原告製品のうち最も安価な子供用ゴーグル(本体価格1000円)の2倍程度であること、本件原告製品は鼻ベルトを3サイズから選択可能であり、ベルトの長さも調節可能であるから、子供が使用することも可能であることを考慮すると、デザイン等の好みや付加的機能により、本件原告製品を選択する者も存在するものと推認される。そうすると、被告製品が本件原告製品と市場において競合しないと断定することはできない」、本件原告製品は、特許法102条1項の『侵害の行為がなければ販売することができた物』に該当すると認めるのが相当である」と述べている。

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