東京地裁(平成9年44日)“レンズ付きフィルムユニット事件特許法102条2項の『侵害行為により得た利益』の算定においては、侵害品の製造ないし販売に相当な因果関係のある費用、すなわち、製造ないし販売に直接必要な変動費及び個別固定費を控除の対象としていわゆる貢献利益(広義の限界利益)を算定すべきであって、侵害品を製造ないし販売しなくとも発生する費用(一般固定費)は控除の対象とすべきではない。例えば、大企業が多数種類の製品を製造販売する中で、1種類の侵害品を製造販売している場合に控除される費用は、直接の原材料費、運送費などの変動費だけになるのに対し、零細な企業が侵害品のみを製造販売しているような場合、あるいは、侵害品を製造販売するためにのみ新工場を建設した場合には、変動費に加え、工場及び機械の減価償却費、工場従業員の給与などの固定費が侵害品の製造販売に相当な因果関係のある個別固定費とみなされると考えるべきであり、粗利益からこのような経費を差し引いて貢献利益を算定すべきである。したがって、貢献利益の算定においては、被告となる企業の規模、被告となる企業の全売上げに占める対象製品の売上げの割合、侵害品の製造販売に当たって必要となった施設、機械、労力、侵害品の製造・販売の期間など様々な要素を全体的に考慮して、侵害品の製造ないし販売に相当な因果関係のある費用(変動費及び個別固定費)を算定する必要がある」と述べている。

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