東京地裁(平成9年89日)“液晶型乳化組成物事件発明を完成した者ないしその権利の承継人が、その発明について独占的排他的な実施の権能を取得するのは、当該発明について特許権の設定登録があった場合に限られ(特許法6条1項参照、設定の登録前の特許を受ける権利については、その発明を実施した者に対し、一定の要件のもとで、設定の登録後に補償金の請求が認められているにすぎない(同法5条。そうすると、そのような設定登録前の特許を受ける権利に独占的排他的実施権が存しない以上、他人が当該権利に係る発明を発明者又はその権利の承継人の許諾なく使用したとしても、特段の事情のない限り、これをもって法律上保護される利益の侵害とみることはできないものと解される。本件において、本件発明についていまだ特許権の設定の登録がされて、
おらず、出願公開がされて公知の情報となっていることは当事者間に争いがなく、その他本件発明の実施について不法行為の成立を肯定すべき事情も認められないから、本件処方(ノウハウ)の本件発明部分の実施については、不法行為を構成しないというべきである
」と述べている。

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