知財高裁(平成19年9月26日)“波形表示装置事件”は、「本件更新工事はNHKがソニーに依頼し、ソニーが本件同期系統図などを作成して行ったものであるところ、公然実施発明1について、ソニーとNHKとの間に明示の秘密保持契約が締結されていたと認めるべき証拠はない。もっとも、秘密保持について、社会通念上又は商慣習上、秘密扱いとすることが暗黙のうちに要請ないし期待され、かつ、これに暗黙の了解がされていることも少なくなく、その中には、そのような暗黙の了解が法的な拘束力を有するに至ることが認められることも考えられないではない」、「本件更新工事の依頼者であるNHKにおいて、自らが工事を依頼して完成させた編集室のシステムについて、商道徳上、みだりにこれを第三者に開示しないことが期待されるなどの事情はあるにしても、その技術内容、交渉経緯等にかかわらず、当然に法的な拘束力を伴う秘密保持義務を負うと認めるべき証拠はない」、「LT440Dと波形モニターとの組合せからなる公然実施発明1について、その組合せについて、ソニーとNHKが特別の共同開発を行った結果として創作された技術であったと伺わせる事情は認められないし、また、その組合せが、本件更新工事に当たり、ソニーからNHKに対し、新たな技術として認識し得るような形で特別に開示された技術であったとの事情も証拠上認められず、その技術内容、交渉経緯等から、NHKが法的な拘束力を伴う秘密保持義務を負っていたとは認められない」、「以上のとおり、公然実施発明1の実施の時点において、公然実施発明1に係る構成について、NHKに、公然実施発明1に係る構成について、明示又は黙示の秘密保持義務等があったとは認められない」と述べている。 |