知財高裁(平成20年10月29日)“ビベンジル類事件”は、「本件発明等取扱規則は、被控訴人が従業員のした職務発明について特許を受ける権利を承継した場合の相当対価について、実質的に出願補償、登録補償及び実績補償の3種に区分し、同区分に従いそれぞれ支払をすること、また、これら各補償の支払時期は、出願補償については出願した時点、登録補償については特許権の設定登録がされた時点と規定し、他方、実績補償の支払時期については、『会社が、特許権等に係る発明等を実施し、その効果が顕著であると認められた場合その他これに準ずる場合は、会社は、その職務発明をした従業員に対し、褒賞金を支給する。』(9条)と規定する。そして控訴人の本訴請求債権は、このうち実績補償に関するものである」、「ところで、実績補償は本件発明等取扱規則9条が定めるように『会社が・・・・発明等を実施し、その効果が顕著である』ときに支払時期が到来するものであるが、会社が発明を実施し、その効果を判定するためには一定の期間経過を必要とすることは道理であるから、上記規則9条は、会社が発明を実施しその効果を判定できるような一定期間の経過をもって実績補償に係る対価請求債権の支払時期が到来することを定めたものと解するのが相当である。そこで、どの程度の期間経過をもって実績補償に係る対価請求債権の支払時期と解すべきかであるが、被控訴人により平成13年11月21日から施行された本件特許報奨取扱い規則・・・・の6条には職務発明者に『営業利益基準』に基づき一定の報奨金が支払われることが、また1条に、上記『営業利益基準』が報奨申請時の前会計年度から起算して連続する過去5会計年度における対象事業の営業利益を基準とするものであることが規定されている。同規則は控訴人が被控訴人会社を退社ないし退任した後の平成13年11月21日から施行されたものであるとしても、5年をもって実績評価期間とする部分は、控訴人在職期間中から関係人の間で当然の前提とされていた内容を注意的に明文化したものと認めるのが相当であり、しかも、これが使用者と従業者の双方にとって不当に長いと解すべき事情も見当たらない。そうすると、本件発明等取扱規則9条における実績補償の支払時期を決する前提となる発明の客観的価値を認定するために必要とされる期間は5年ということになる」、「以上によれば、本件発明等取扱規則9条における実績補償に係る相当対価の支払請求債権は、各職務発明の実施から5年を経過した時点が消滅時効の起算点となるところ、・・・・本件発明はいずれも平成5年10月7日に実施されたことが認められるから、本件発明の実績補償に係る相当対価支払請求債権の消滅時効の起算点は、それから5年を経過した平成10年10月7日ということになる」と述べている。 |