知財高裁(平成20年10月30日)“回転要素の角位置を決定する軸LED位置検出装置事件”は、「旧特許法17条の2第4項(サイト注:現5項)・・・・2号は、『特許請求の範囲の減縮(第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)』と規定しており、同括弧書きの文言によれば、2号において補正が認められる特許請求の範囲の減縮といえるためには、補正後の請求項が補正前の請求項に記載された発明を限定する関係にあること、並びに、補正前の請求項と補正後の請求項との間において、発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であることを必要とするとしたものである。そうすると、この『限定する』ものであるかどうか、『同一である』かどうかは、いずれも、特許請求の範囲に記載された当該請求項について、その補正の前後を比較して判断すべきものであり、補正前の請求項と補正後の請求項とが対応したものとなっていることを当然の前提としているといえる。したがって、同号の規定は、請求項の発明特定事項を限定して、これを減縮補正することによって、当該請求項がそのままその補正後の請求項として維持されるという態様による補正を定めたものとみるのが相当であって、増項による補正は、補正後の各請求項の記載により特定された発明が、全体として、補正前の請求項の記載により特定される発明よりも限定されたものとなっているとしても、上記のような対応関係がない限り、同号にいう『特許請求の範囲の減縮』には該当しないことになる。また、特許出願の審査は、請求項ごとに行われ、拒絶理由の通知も請求項ごとに記載されるものであるところ、審判請求に伴ってする補正につき、出願人の便宜と迅速、的確かつ公平な審査の実現等の調整という観点から、既にされた審査結果を有効に活用できる範囲内で補正を認めることとした旧特許法17条の2第4項の制度趣旨に照らすならば、1つの請求項を複数の請求項に分割するような態様による補正は、特段の事情がない限り、認められないとする上記の解釈は是認されるものといえる」と述べている。 |