東京地裁(平成20年2月20日)“磁気記録再生装置事件”は、「電電公社は、製造部門を有さず、必要とされる電気通信資材をすべて外部に発注することにより、入手していたが、電気通信資材は、品質、性能の安定性が特に要求されること、その多くは、電電公社仕様による特注品であり、電電公社以外に販路がないこと等の特殊性があり、このような特殊性から、電電公社は、公社でありながら、電気通信部材のほとんどを随意契約によって発注し、その発注先を信頼性のある特定の企業とし、発注に当たっては、企業の技術力や納入実績、電電公社への貢献度等の他、1社独占の弊害の回避等の観点も考慮して、特定の企業を選定し、選定した企業に対しては、技術指導をしながら、対象製品の開発、製品化を共同で行い、その製品の構成、品質、材料等についても厳しく指示、管理を行っていたものと認められる」、「そして、・・・・安立電機及び田村電機は、電電公社から、カードリーダ及びそれが組み込まれた公衆電話機の発注を受ける前から、その具体的な仕様、材料等について、電電公社の指導、監督の下、電電公社と共同でこれらを開発したこと、同カードリーダに取り付ける磁気ヘッドについては、電電公社の指示により、被告の製造した製品を使用し、その他の材料等についても、同様に、電電公社の指示に従っていたものと推測されること、公衆電話機の品質についても、電電公社からの厳しい指揮、管理が行われていたこと、安立電機及び田村電機が製造した公衆電話機は、すべて電電公社に納入することを予定しており、実際にも、他に販売していないことが推認される」、「以上のような電電公社と安立電機及び田村電機との関係に基づけば、安立電機及び田村電機のテレフォンカード式公衆電話機の電電公社への納入における、カードリーダの製造は、電電公社自身による製造と評価するのが相当であり、したがって、電電公社が、安立電機及び田村電機にテレフォンカード式公衆電話機用のカードリーダを製造させたことは、電電公社が、本件特許権の共有者として、被告の同意を要せずに実施することができるものである(特許法73条2項)」と述べている。 |