知財高裁(平成20年2月29日)“ビットの集まりの短縮表現を生成する装置事件”は、「数学的課題の解法ないし数学的な計算手順(アルゴリズム)そのものは、純然たる学問上の法則であって、何ら自然法則を利用するものではないから、これを法2条1項にいう発明ということができないことは明らかである。また、既存の演算装置を用いて数式を演算することは、上記数学的課題の解法ないし数学的な計算手順を実現するものにほかならないから、これにより自然法則を利用した技術的思想が付加されるものではない。したがって、本願発明のような数式を演算する装置は、当該装置自体に何らかの技術的思想に基づく創作が認められない限り、発明となり得るものではない(仮にこれが発明とされるならば、すべての数式が発明となり得べきこととなる」、「特許請求の範囲の記載・・・・をみても、単に『ビットの集まりの短縮表現を生成する装置』により上記各『演算結果を生成し』これを『出力している』とするのみであって、使用目的に応じた演算装置についての定めはなく、いわば上記数学的なアルゴリズムに従って計算する『装置』という以上に規定するところがない。そうすると、本願発明は既存の演算装置に新たな創作を付加するものではなく、その実質は数学的なアルゴリズムそのものというほかないから、これをもって、法2条1項の定める『発明』に該当するということはできない」、「原告は、『装置』の発明としての本願発明の具体的構成は、示された演算内容に応じて規定される演算回路として特許請求の範囲に明確に記載されている旨主張する。しかし、・・・・特許請求の範囲には数学的なアルゴリズムと、それを実現するものとして単に『装置』と記載されているのみであって、当該数学的アルゴリズムをデジタル演算装置で演算するための具体的な回路構成が記載されているものではない」と述べている。 |