知財高裁(平成20年3月27日)“ソーワイヤ用ワイヤ事件”は、「原告は、本件明細書の発明の詳細な説明に記載された具体例は、特許請求の範囲に記載されたワイヤの径サイズ、内部応力値の数値範囲全体にわたるものではないこと、また、示された具体例に効果の連続性がなく、内部応力値を特許請求の範囲記載の範囲(『0±40kg/mm』)に設定することで、フリーサークル径の減径防止や小波の発生の防止という本件特許発明が奏するとされている効果が得られるものと理解することは困難であり、本件明細書はサポート要件を満たさないと主張する。しかし、・・・・本件特許発明のワイヤの径サイズ(『0.06〜0.32mmφ』)は、通常使用されるワイヤサイズに基づいて規定したものであること、本件特許発明の内部応力の範囲(『0±40kg/mm』)は、ワイヤの表面層の内部応力の絶対値が小さい数値を規定したもので、その上限値又は下限値に格別の臨界的意義があるわけではないこと、発明の詳細な説明の【表1】記載の本件特許発明の具体例1ないし5は、いずれも微少小波が発生していないことで一貫し、【表1】記載の具体例及び比較例から、内部応力の絶対値が小さい具体例ほどフリーサークル径が大きくなる傾向にあることを理解することができることに照らすならば、【表1】記載の本件特許発明の具体例1ないし5は、特許請求の範囲に記載されたワイヤの径サイズ、内部応力値の数値範囲全体にわたるものでないからといって、本件明細書はサポート要件を満たしていないとはいえない。したがって、原告の上記主張は採用することができない」と述べている。 |