知財高裁(平成20年4月21日)“結晶性アジスロマイシン2水和物事件”は、「特許法29条1項は、同項3号の『特許出願前に・・・・頒布された刊行物に記載された発明』については、特許を受けることができないと規定するものであるところ、上記『刊行物』に『物の発明』が記載されているというためには、同刊行物に当該物の発明の構成が開示されていることを要することはいうまでもないが、発明が技術的思想の創作であること(同法2条1項参照)にかんがみれば、当該物の発明の構成が開示されていることに止まらず、当該刊行物に接した当業者が、特別の思考を経ることなく、容易にその技術的思想を実施し得る程度に、当該発明の技術的思想が開示されていることを要するものというべきである。そして、当該物が、例えば新規の化学物質である場合には、新規の化学物質は、一般に製造方法その他の入手方法を見出すことが困難であることが少なくないから、刊行物にその技術的思想が開示されているというために、製造方法を理解し得る程度の記載があることを要することもあるといわなければならない」と述べている。 |