知財高裁(平成20年6月12日)“被覆硬質部材事件”は、「本件明細書では、Ia値について、本件発明の実施例として開示されたIa値は、・・・・【表1】における本発明例7ないし10の2.3から3.1までという非常に限られた範囲の4例だけであり、これらの実施例をもって、上限の定まらないIa値2.3以上の全範囲にわたって、本件発明の課題を解決し目的を達成できることを裏付けているとは到底いうことができない」、「原告は、通常、本件発明のような場合、実施例の数としては数例が一般的であり、それらにより発明の目的、課題解決の方向が示されておれば、実施例以外の箇所ではIa値の条件を満たされていることで十分当業者が理解できると考えられると主張する。確かに、数例の実施例によってもサポート要件違反とされない事例も存在するであろうが、そのような事例は、明細書の特許請求の範囲に記載された発明によって課題解決若しくは目的達成等が可能となる因果関係又はメカニズムが、明細書に開示されているか又は当業者にとって明らかであるなどの場合といえる。ところが、本件発明1の場合、・・・・本件明細書には、何ゆえIa値が2.3以上であると皮膜の特性が良くなるのかにつき、因果関係、メカニズムは一切記載されておらず、また、それが当業者にとって明らかなものといえるような証拠も見当たらないものであるから、原告の上記主張は採用することはできない」と述べている。 |