知財高裁(平成20年6月24日)“双方向歯科治療ネットワーク事件”は、「特許の対象となる『発明』とは、『自然法則を利用した技術的思想の創作』であり(特許法2条1項)、一定の技術的課題の設定、その課題を解決するための技術的手段の採用及びその技術的手段により所期の目的を達成し得るという効果の確認という段階を経て完成されるものである。したがって、人の精神活動それ自体は、『発明』ではなく、特許の対象とならないといえる。しかしながら、精神活動が含まれている、又は精神活動に関連するという理由のみで、『発明』に当たらないということもできない。けだし、どのような技術的手段であっても、人により生み出され、精神活動を含む人の活動に役立ち、これを助け、又はこれに置き換わる手段を提供するものであり、人の活動と必ず何らかの関連性を有するからである。そうすると、請求項に何らかの技術的手段が提示されているとしても、請求項に記載された内容を全体として考察した結果、発明の本質が、精神活動それ自体に向けられている場合は、特許法2条1項に規定する『発明』に該当するとはいえない。他方、人の精神活動による行為が含まれている、又は精神活動に関連する場合であっても、発明の本質が、人の精神活動を支援する、又はこれに置き換わる技術的手段を提供するものである場合は、『発明』に当たらないとしてこれを特許の対象から排除すべきものではないということができる」、「請求項1に規定された『要求される歯科修復を判定する手段』及び『前記歯科修復の歯科補綴材のプレパラートのデザイン規準を含む初期治療計画を策定する手段』には、人の行為により実現される要素が含まれ、また、本願発明1を実施するためには、評価、判断等の精神活動も必要となるものと考えられるものの、明細書に記載された発明の目的や発明の詳細な説明に照らすと、本願発明1は、精神活動それ自体に向けられたものとはいい難く、全体としてみると、むしろ、『データベースを備えるネットワークサーバ』、『通信ネットワーク』、『歯科治療室に設置されたコンピュータ』及び『画像表示と処理ができる装置』とを備え、コンピュータに基づいて機能する、歯科治療を支援するための技術的手段を提供するものと理解することができる」、「したがって、本願発明1は、『自然法則を利用した技術的思想の創作』に当たるものということができ、本願発明1が特許法2条1項で定義される『発明』に該当しないとした審決の判断は是認することができない」と述べている。 |