知財高裁(平成21年10月28日)“細断機事件”は、「本件原出願明細書には、発明の目的を『メンテナンスが行ないやすく、且つ、部品点数を少なくしつつも剛性の大きな(強度の高い)細断機を提供すること』とし、具体的には『前後の揺動側壁が開くので、メンテナンスが行ないやすい。』、また、『2本の支持軸と1本の連結材で左右の固定側壁を連結するので、細断機の剛性を大きくすることが出来る。』、更に、『2本の支持軸が、揺動側壁の枢軸と左右の固定側壁を連結する連結材とを兼ねているので、部品点数を少なくしてコスト低減を図ることが出来る。』発明が記載、開示されている。そうすると、『左右の固定側壁の上部前部に渡し止められた連結材』(本件連結材)は、細断機の剛性を大きくするという発明の解決課題を達成するための必須の構成であり、本件原出願明細書には、同構成を有する発明のみが開示されており、同構成を具備しない発明についての記載、開示は全くなく、また、自明であるともいえない。したがって、本件原出願明細書の特許請求の範囲に記載された、『左右の固定側壁の上部前部に渡し止められた連結材』との記載部分を本件原出願明細書の『特許請求の範囲』の記載から削除したことは、細断機の剛性確保に関して、新たな技術的意義を実質的に追加することを意味するから、本件分割出願は、もとの出願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてしたものではなく、分割出願の要件を満たしていないから、不適法である」と述べている。 |