知財高裁(平成1年0月8日)“ピリドベンゾオキサジン誘導体事件原告は、実際の治験計画届の提出前には、医薬当局と新たな臨床試験が必要かどうか、どのような枠組みで承認申請をするかなどの協議をしたり、臨床試験を実施してくれる医師を探して依頼したりする作業期間が必要であり、これらの準備作業をした平成4年2月9日以降の期間は、実質的にみても『政令に定めるものを受けることが必要であるため、その特許発明の実施をすることができない期間』の起算日(承認を受けるのに必要な試験を開始した日)に該当するというべきである旨主張する。しかし、原告の上記主張も理由がない。すなわち、準備がいつどのように開始され、継続されるのかは第三者にとって必ずしも明確ではない。したがって、仮に、不明確な準備作業の開始日をもって『承認を受けるのに必要な試験を開始した日』(最高裁判所・・・・平成1年0月2日・・・・判決参照)に該当するとするならば、延長登録期間の客観的な確定を困難にさせ、予見可能性を担保することができなくなる。したがって、臨床試験を実施することが治験計画届や治験を実施する医療機関との契約書等により客観的に明確になった日をもって『承認を受けるのに必要な試験を開始した日』であるとして、『政令に定めるものを受けることが必要であるため、その特許発明の実施をすることができない期間』の進行が開始するものとするのが相当である。これを本件についてみると、本件国内臨床薬理試験の治験届が提出された日である平成5年8月9日をもって、『承認を受けるのに必要な試験を開始した日』に当たるものと認めるのが相当であり、本件において、この認定を左右するに足りる証拠はない」と述べている。

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