知財高裁(平成1年26日)“ゴースト像を除去する走査光学系事件一審被告は、被告算定方法Cとして、本件特許発明の譲渡時点における対価を求めるため、被告ライセンス契約により一審被告が受けるべき利益の同時点での予測値を、一審被告が負担するLBP等の事業(ライセンス)の失敗リスクを反映した割引率を用いて割り引いて譲渡時点の価値に引き直す、ディスカウントキャッシュフロー方式で計算する方法を主張し、ナショナル・エコノミック・リサーチ・アソシエイツ株式会社作成の鑑定書を提出する・・・・。上記方式は、評価期間の本件特許に関連する予測ライセンス収入を、LBP及びMFP等事業のキャッシュフローを元に推測するものであり、各年度のLBP及びMFP等事業のキャッシュフローは、評価期間初年度のキャッシュフローが一定の成長率で伸びると仮定し、その成長率を、株主持分キャッシュフロー(FCFE)モデルを用いて、一審被告の当時の事務機部門の仮想株価、株主資本コスト、初年度の株主持分キャッシュフロー(FCFE)を代入して求めるものである・・・・。このような算定方法は、特許発明の独占的実施による利益を実際に得た後、あるいは、第三者に特許発明の実施許諾をし、実施料収入を実際に得た後に、相当の対価を判断する場合においては、適当な方法とはいえない。なぜなら、実際に得た独占的実施による利益あるいは実施料収入額が判明しているにもかかわらず、上記のような仮想の数値を用いて、予測ライセンス収入を算定し、事業リスクを加味した割引率を用いる必要性に乏しいからである」と述べている。

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