知財高裁(平成21年6月25日)“簡易レタリングテープ作製機事件”は、「本来、日本国外において、日本で特許を受けている発明の技術的範囲に属する物を製造してその価値を利用しても、日本の特許権を侵害することにはならない。それは、日本における特許権が、日本の主権の及ぶ日本国内においてのみ効力を有するにすぎないことに伴う内在的な制約によるものであり、一般に属地主義として承認されているところであって、このような見地からすると、特許法2条3項1号にいう『生産』とは、日本国内におけるもののみを意味すると解すべきである。そうすると、外国において発明に係る物の生産に供される物についてまで、特許法101条1号ないし2号が間接侵害の要件として規定する『その物の生産にのみ使用する物』又は『その物の生産に用いる物』であるとして特許権の効力を拡張する場合には、日本の特許権者が、本来当該特許権によっておよそ享受し得ないはずの、外国での実施による市場機会の獲得という利益まで享受し得ることになり、不当に当該特許権の効力を享受することになるというべきである。したがって、『その物の生産にのみ使用する物』、『その物の生産に用いる物』における『生産』とは、日本国内におけるものに限られると解するのが相当であり、このように解することは、前記のような特許法2条3項1号にいう『生産』の意義にも整合するものというべきである」と述べている。 |