知財高裁(平成21年6月29日)“基板処理装置事件”は、「178条1項は、『審決に対する訴え・・・・は、東京高等裁判所の専属管轄とする。』と規定する。本来、審決は、行政処分の一類型であるから、行政事件訴訟法によれば、その管轄裁判所は地方裁判所になるのであるが、以下の2つの理由から、一審を省略して、東京高等裁判所に出訴すべきものとされた。すなわち、@特許庁での審判手続が、裁判に類似した準司法手続によって厳正に行われるべきことから、地方裁判所においてその適否を判断することによる適正さの要請よりも、事件を迅速に解決するとの要請を優先すべきであるとしたこと、A事件の内容が専門技術的であるため、特許関係の専門官庁において実施された審判手続を尊重してよいとしたことによるものである。このような理由も相まって、特許無効審判の審理についても、原則として口頭審理の方式によることと規定されている(145条1項)」、「本件審判手続において、@原告は、冒認を疑わせる事情を具体的に主張していた、A被告は、『審判事件答弁書』及び『上申書』を提出したのみで、その他には、『特許出願がその特許に係る発明の発明者自身又は発明者から特許を受ける権利を承継した者によりされたこと』について、具体的な主張立証活動を何ら行っていなかった、B審判官は、書面審理の方式に変更した、C原告は、審判官に対し、口頭審理を開催し、主張立証責任の原則に則り、被告等の当事者本人尋問、証人尋問を行い、本件特許出願が冒認出願であることに関して真相究明を尽くすことなどを求めた、Dしかし、審判体は、審理を終結して、本件審決をしたものである。本件審判手続は、上記のような経過であり、その具体的な争点の内容、性質に照らすと、口頭審理によるべきであるが、それにもかかわらず、職権で、冒認出願を理由とする無効審判の審理を口頭審理から書面審理に変更した点において、著しく公正を欠く審理であるというべきである。審判手続の進行や審理の方式については、審判体(審判長)に合理的な裁量があることを考慮してもなお、その裁量を逸脱しているものといえる。そして、このような手続上の瑕疵は、結論に影響を及ぼす誤りということができる」と述べている。 |