知財高裁(平成21年7月29日)“ダイセット事件”は、「特許法157条2項には、審決は、審決の結論のみならず結論に至った理由を文書に記載する旨が規定されている。特許法が、審決書に理由の記載を要求した趣旨は、@審決における判断の合理性等を担保して恣意を抑制すること、A審決の理由を当事者に知らせることによって、取消訴訟(不服申立)の要否等を検討するため、当事者に対する便宜を図ること、B理由を文書に記載することによる事実上の結果として、公正かつ充実した審判手続が確保されること等によるものである。特に、審決において、特許法29条2項所定の要件を充足すると判断する場合には、その性質上、客観的な証拠(技術資料)に基づかない認定や論理性を欠いた判断をする危険性が常に伴うものである。したがって、審決書における『審決の理由』には、事実認定が証拠によって適切にされ、認定事実を基礎とした結論を導く過程が論理的にされている旨客観的に説示されていることが必要であり、後に争われる審決取消訴訟においても、その点に関して、吟味、判断するのに十分な内容であることが不可欠といえる」と述べている。 |