大阪地裁(平成1年87日)“ポリプロピレンの改質法事件本件のように自らが当該発明を実施している場合においては、これにより実際に得た売上高から通常実施権を行使することにより得られるであろう売上高を控除したもの(超過売上高)に基づく収益をもって『その発明により使用者等が受けるべき利益』というべきである。この超過売上高に基づく収益の具体的な算出方法としては、本件においては、当事者双方の主張、立証の内容にかんがみ、当該発明を他人に実施許諾したと仮想し、その場合に得られるであろう実施料収入を算定するという方法によるのが相当であると認められる」、「本件においては、・・・・使用者等の独占の利益を算定するため、使用者等が競合他者に特許権の実施を許諾したと仮想する方法によるところ、そのような方法において超過売上高の割合を認定するには、使用者等が、当該発明を用いた製品を製造、販売し得る競合他者すべてに実施許諾して(以下、この実施許諾を受けたと仮想される競合他者を『仮想ライセンシー』という。)、現実に享受している独占の利益をすべて捨象したものとし、自らには、通常実施権に基づいて当該発明の実施製品を製造、販売することによって得られる利益のみが残存する状態を仮想する必要がある。そのような仮想の下、使用者等が獲得し得る当該発明の実施製品の売上高が同実施製品の市場全体における売上高(使用者等による当該発明の実施製品による現実の売上高を用いる)に占める割合がどの程度になるのかを、仮想ライセンシーのそれとの比較による使用者等の技術力及び営業力の程度、市場全体の規模、性質及び動向、当該発明の実施品の性質及び内容等の諸要素に基づいて認定することにより、使用者等が仮想ライセンシーから取得すると仮想される実施料を算定する基礎となる超過売上高の割合を求めることが相当であるといえる」、「ゲルオールMD(サイト注:本件特許1、2、6に係る職務発明が売上げに寄与した商品)については、本件特許1の特許権存続期間の満了の前後により売上高が大きく変動しており、本件特許1のゲルオールMDの売上に対する排他的効力の大きいことを示すものであり・・・・、その存続期間中の超過売上高(本件特許1、2、6によるゲルオールMDの超過売上高)は0%、その存続期間満了後の超過売上高(本件特許2、6によるゲルオールMDの超過売上高)は0%と認めるのが相当である」、「ゲルオールMDを製造するにあたり使用している発明は、本件発明1、2、6であるところ、・・・・本件発明1の貢献度が高く、各発明間の貢献度は少なくとも0%を下らないと認められる。一方、本件発明2・・・・の効果は、アセタール類の製造において選択率、収率を高めることにある。他方、本件発明6・・・・の効果は、短時間に効率よく目的のアセタール類の製造ができることにあり、本件発明2との間で、貢献度の違いがどの程度あるかは不明であり、同等の貢献度であると推認される。以上の事情を総合すれば、各発明間の貢献度は本件発明1は0%、本件発明2及び6は各5%であると認めるのが相当である」、「被告は、本件訴外特許がゲルオールMD・・・・の売上げに貢献している旨主張する」、「本件訴外特許発明の貢献度を無視することはできず、・・・・一定程度の貢献があり、その結果、他の発明の貢献度が相対的に一定程度低くなったとして扱うのが相当である。そして、その割合は、本件訴外特許発明の実施の前後で顕著な売上高の違いがあるとは思えないことから、2割程度相対的に低くする(サイト注:0.8を乗じる)ことで足りると考える」、「実施料率は、・・・・次のとおり認めるのが相当である」、「本件特許1の特許権存続期間満了日まで 3%」、「同満了日の経過後 2%」、「本件特許1の貢献は、平成元年6月2日から平成7年4月2日までであるので、この期間とその余の期間に分けて、算出し、さらに、平成3年4月1日以降は、本件訴外特許発明の実施による調整をする。そうすると、計算式は、次のとおりとなり」、「平成元年6月2日〜平成7年4月2日 [計算式]本件特許1:本件特許2:本件特許6 各期の売上高×0.4(超過売上高)×0.3(仮想実施料率)×特許毎の貢献度(0.5:0.5:0.5)・・・」、「平成7年4月3日〜平成3年3月1日 [計算式]本件特許2:本件特許6 各期の売上高×0.2(超過売上高)×0.2(仮想実施料率)×特許毎の貢献度(0.5:0.5)・・・」、「平成3年4月1日〜平成1年3月3日 [計算式]本件特許2:本件特許6 各期の売上高×0.2(超過売上高)×0.2(仮想実施料率)×特許毎の貢献度(0.5:0.5)・・・・×0.8(訴外特許による調整」と述べている。

特許法の世界|判例集