東京地裁(平成2年16日)“静電矯正器事件特許法7条の2第2項、184条の2第2項は、外国語書面出願及び外国語特許出願の場合における補正の範囲についての特別な取扱いに対応した手続として誤訳訂正書の提出の手続を定めたものと解されること、特許法は、外国語書面出願及び外国語特許出願以外の特許出願については、そのような手続の定めを置いていないことにかんがみれば、特許法において、誤訳の訂正を目的とした補正の手続として誤訳訂正書の提出が認められる特許出願は、外国語書面出願及び外国語特許出願に限るものと解するのが相当である」、本件について検討するに、本件分割出願は、外国語特許出願である本件原出願をもとの特許出願とする分割出願であるが、本件分割出願の願書には日本語による明細書等が添付されたものであるから・・・・、日本語による特許出願であって、外国語書面出願又は外国語特許出願のいずれにも当たらないことは明らかである。したがって、原告がした本件分割出願の明細書についての本件誤訳訂正書の提出に係る手続は、特許法上根拠のない不適法な手続であって、その補正をすることができないものであるから、これを却下した本件処分の判断に誤りはないものと認められる」、原告は、本件分割出願は、外国語特許出願である本件原出願に基づきされた分割出願であるから、本件原出願と同様、外国語特許出願であると解すべきである旨主張する。しかし、特許法旧4条1項は、特許出願人は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をすることができる期間内に限り、二以上の発明を包含する特許出願の一部を一又は二以上の新たな特許出願とすることができると規定するものであり、同条項によれば、分割出願は、二以上の発明を包含する特許出願である原出願とは別個の『新たな特許出願』であることは明らかである。また、同条2項本文は、前項の場合は、新たな特許出願は、もとの特許出願の時にしたものとみなすと規定し、特許法4条4項は『新たな特許出願』をする場合には、もとの特許出願について提出された書面又は書類であって、新たな特許出願について0条4項、1条4項又は3条1項及び2項(前条3項において準用する場合を含む)の規定により提出しなければならないものは、当該新たな特許出願と同時に特許庁長官に提出されたものとみなすと規定するが、これらの規定は、分割出願が原出願とは別個の『新たな特許出願』であり、原出願についてされた手続が当然には分割出願に及ぶものではないことを前提に、明文で特別の効果を定めたものである。したがって、原出願が外国語特許出願であるからといって、原出願とは別個の『新たな特許出願』が当然に外国語特許出願になるものではなく、原告の上記主張は採用することができない」と述べている。

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