大阪地裁(平成22年1月28日)“組合せ計量装置事件”は、「民法724条は、不法行為による損害賠償請求権の期間制限(消滅時効)を定めたものであり、不法行為に基づく法律関係が、未知の当事者間に予期しない事情に基づいて発生することがあることにかんがみ、被害者による損害賠償請求権の行使を念頭に置いて、消滅時効の起算点に関して特則を設けたものである。したがって、同条にいう『損害及び加害者を知った時』とは、被害者において、加害者に対する賠償請求が事実上可能な状況の下に、その可能な程度にこれらを知った時を意味するものと解するのが相当であり、同条にいう被害者が損害を知った時とは、被害者が損害の発生を現実に認識した時をいうと解すべきである(最高裁判所平成14年1月29日・・・・判決・・・・参照)。そして、本件のような特許権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求権については、被害者としては、加害者による物件の製造販売等を認識していたとしても、当該物件が自己の特許発明と対比してその技術的範囲に属し、当該加害者の行為が被害者の有する特許権を侵害する行為であることを現実に認識していなければ、これによる損害の発生を現実に認識し得ず、加害者に対して損害賠償請求権を行使することができないから、『損害及び加害者を知った』というためには、加害者の行為が被害者の特許権を侵害する行為であることを現実に認識することを要するものと解するのが相当である」、「原告としては、カタログの収集や実機の分析等により被告物件の構成・性能等を継続的に調査し、被告物件の構成を相当程度詳細に把握していたものと認められるが、・・・・認定した事実からは、原告において、本件訴訟提起の3年以上前の時点で、被告物件と本件特許発明とを対比し、被告物件が本件特許発明の技術的範囲に属するものであって、これを製造販売する被告の行為が本件特許権を侵害することを現実に認識していたとまでは認められず、他にこれを認めるに足りる証拠もない。したがって、原告が本件訴訟を提起した平成19年2月26日の時点では、原告の被告に対する損害賠償請求権のうち消滅時効期間の3年が経過したと認められるものはないから、被告の消滅時効の主張は採用することができない」と述べている。 |