大阪地裁(平成2年19日)“パターン認識方法事件『その発明により使用者等が受けるべき利益の額』とは、自己実施の場合には、・・・・使用者が従業員等から特許を受ける権利を承継し、その結果特許を受けて発明の実施を排他的に独占し又は独占し得ることによって得られる独占の利益と解すべきである。そして、ここでいう『独占の利益』とは、自己実施の場合には、他者に当該特許発明の実施を禁止したことに基づいて使用者が上げた利益、すなわち、他者に対する禁止権の効果として、他者に許諾していた場合に予想される売上高と比較してこれを上回る売上高(以下、この差額を『超過売上高』という)を得たことに基づく利益(以下『超過利益』という)が、これに該当するものである。この超過利益については、超過売上高に対する利益率なるものが認定困難である一方、その額は、仮に本件特許発明を他者に実施許諾した場合に第三者が当該超過売上高の売上げを得たと仮定した場合に得られる実施料相当額を下回るものではないと考えられることからすると、超過売上高に当該実施料率(仮想実施料率)を乗じて算定する方法によることが許されるものと解される」、本件サービスは、本件発明を必須の構成とするものではない上、文字認識方法として本件発明は従来技術に比して格別技術的な優位性を有するものではなく、遅くとも本件サービス実施時、認識率において他の製品に比して格別顕著な差を有していたものではないこと、他方、文字認識に係る代替技術は、市場に多く存在していたことが認められるというのであるから、被告と競合する他者は、いつでも、文字認識部分について、本件発明と技術的に同等以上の代替技術を使用して、本件発明を使用することなく、本件サービスと同様のサービスを行うことができたものというべきである。そうすると、被告が、本件発明を排他的に実施していたことによって、すなわち、他者に対する禁止権の効果として、超過売上高を得たという関係を認めることはできない」と述べている。

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