東京地裁(平成22年11月18日)“飛灰中の重金属の固定化方法事件”は、「原告は、・・・・被告製品の販売によって原告が受けた損害について、特許法102条1項によって算定された損害額を請求するとともに、その中で、被告製品の販売数量のうち原告において『販売することができないとする事情』(同項ただし書)が認められる数量については、同条3項に基づく実施料相当額の損害額を請求できる旨主張する。しかしながら、特許権者が特許権侵害行為により受けた損害について、特許法102条1項は、特許権侵害行為をした者がその侵害行為を組成した物を譲渡したときは、その譲渡行為がなかったとすれば特許権者が自己の物を販売することによって得ることができた利益(逸失利益)の損害額の算定方式を定めた規定であって、特許権侵害行為を組成した物の譲渡行為がなかったという仮定を前提とした損害額の算定方式を示しているのに対し、同条3項は、特許発明の実施があったこと(例えば、特許発明の実施品である特許権侵害行為を組成した物の譲渡行為があったこと)を前提としてこれに対し特許権者が受けるべき実施料相当額の損害額の算定方式を定めた規定であって、両者は前提を異にする損害額の算定方式であり、また、同条1項による逸失利益の損害賠償を請求する特許権者が、その損害額算定の対象とした譲渡数量のうち、同項ただし書により特許権者が『販売することができないとする事情』に相当する数量として控除するものとされた分に対応する実施料相当額を請求し得ると解すると、特許権者が侵害行為に対する損害賠償として請求し得る逸失利益とともに、この逸失利益を超える額についてまで損害賠償を請求することを認めることになるが、このような事態を認めることは、妥当でないというべきである(知財高裁平成18年9月25日判決・・・・参照)」と述べている。 |