東京地裁(平成22年11月18日)“飛灰中の重金属の固定化方法事件”は、「民法724条は、不法行為による損害賠償請求権の消滅時効の起算点につき、被害者又はその法定代理人が『損害及び加害者を知った時』と規定するところ、ここにいう『損害及び加害者を知った時』とは、被害者等において、『加害者に対する賠償請求が事実上可能な状況のもとに、その可能な程度にこれを知った時を意味するもの』と解するのが相当である(最高裁判所昭和48年11月16日・・・・判決・・・・参照)。そして、これを、本件のような物の製造、販売による特許権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求権についてみると、被害者等に当たる特許権者としては、加害者による当該物の製造、販売という客観的事実を認識するのみならず、当該物が自己の特許権に係る特許発明の技術的範囲に属することまで認識していなければ、加害者の当該行為が自己の特許権を侵害する不法行為であることを認識し得ず、ひいては、加害者に対して損害賠償請求権を行使することはできないものといえるから、特許権者において、『損害及び加害者を知った』といえるためには、加害者の製造、販売する物が被害者の特許権に係る特許発明の技術的範囲に属することについてまで認識することが必要であると解される」と述べている。 |