知財高裁(平成22年11月30日)“安全後退用針を備えたカニューレ挿入装置事件”は、「甲1と甲5、甲6及び甲10から把握される周知技術とは、医療器具ととび出しナイフという分野が全く異なる技術である上、両者の構成が特段に近似しているわけでもない。さらに、ナイフの刃がむき身の状態では危険であるために、刃を引き込んで収納するということが、医療関係者が使用済みの注射針に誤って触れることにより病気に感染するのを防止するという、甲1の課題と共通するものでもない。したがって、甲1と甲5、甲6及び甲10から把握される周知技術が、人体等を傷つけることを防止するという広い意味での『安全』という点で共通するとしても、その『安全』の意味合いが大いに異なるものであって、技術分野の相違に付随して課題、構成も異なるから、この周知技術を甲1に適用する動機付けはないといわざるを得ない。したがって、本件訂正前発明は、甲1発明並びに甲5及び甲6に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものとはいえないとした審決の判断に誤りはない」と述べている。 |