知財高裁(平成22年2月24日)“加工工具事件”は、「被控訴人の代表者であるFは、平成16年6月14日までの間に・・・・被控訴人がA(サイト注:控訴人に在職中に職務発明として本件発明を完成させた後に控訴人と秘密保持契約を締結した上で被控訴人へ転職した者)から本件発明の特許を受ける権利の譲渡を受けた際、同発明について特許出願がされていないこと及び本件発明はAが控訴人の従業員としてなしたものであることを知ったというべきである。そして、Fは、Aから本件発明について開示を受けてそのまま特許出願しかつ製品化することは、控訴人の秘密を取得して被控訴人がそれを営業に用いることになると認識していたというべきであり、さらに、本件発明はAが控訴人の従業員としてなしたものであることからすると、通常は、控訴人に承継されているであろうことも認識していたというべきである。このように、被控訴人の特許出願は、控訴人において職務発明としてされた控訴人の秘密である本件発明を取得して、そのことを知りながらそのまま出願したものと評価することができるから、被控訴人は『背信的悪意者』に当たるというべきであり、被控訴人が先に特許出願したからといって、それをもって控訴人に対抗することができるとするのは、信義誠実の原則に反して許されず、控訴人は、本件特許を受ける権利の承継を被控訴人に対抗することができるというべきである」と述べている。 |