東京地裁(平成22年2月26日)“ソリッドゴルフボール事件”は、「原告は、原告が『販売することができないとする事情』に相当する数量に応じた被告各製品の譲渡数量部分についても、被告が無許諾で実施していたことに変わりはないから、当該部分について、特許法102条3項に基づいて、実施料相当額の損害賠償を請求できる旨主張する。しかしながら、特許法102条1項は、特許権侵害に当たる実施行為がなかったことを前提に原告の逸失利益を算定するのに対し、同条3項は、特許発明の実施に対し受けるべき実施料相当額を損害とするものであるから、両者は前提を異にする損害算定方式であり、また、特許権者によって販売することができないとされた分についてまで実施料相当額を請求し得ると解すると、特許権者が侵害行為に対する損害賠償として請求し得る逸失利益以上の損害の填補を受けることを認めることになるが、このように特許権者の逸失利益を超えた損害の填補を認めることは、特段の事情がない限り、妥当でないというべきである(知財高裁平成18年9月25日判決・・・・参照)。そして、上記特段の事情としては、例えば、『販売することができないとする事情』に相当する数量部分が権利者の実施能力を超える部分であって、特許法102条1項の損害額算定の対象とされていない場合などが考えられるが、本件においては、・・・・原告は、被告各製品の販売数量の全部について原告各製品を製造販売する能力(供給能力)を有していたものであり、原告が『販売することができないとする事情』に相当する数量部分についても実施能力を有していたのであるから、このような場合には該当しない。結局、本件証拠上、上記特段の事情があるものと認めるに足りない。したがって、原告の上記主張は採用することができない」と述べている。 |