知財高裁(平成2年57日)“中空ゴルフクラブヘッド事件本件明細書には、従来の技術では、金属製外殻部材と繊維強化プラスチック製外殻部材の接合強度が十分に得られず、ゴルフクラブヘッドとしての耐久性を確保することが極めて困難であったものであるが・・・・、本件発明によれば、金属製外殻部材と繊維強化プラスチック製外殻部材の接合強度を高めることができ、ゴルフクラブヘッドとしての耐久性を確保しながら、異種素材の組み合わせに基づいて飛びを含むゴルフクラブの性能の向上を図ることが可能になる・・・・との効果が記載されている。そして、被告製品のカタログ・・・・においては、チタン等の金属と炭素繊維強化プラスチックを組み合わせたカーボン複合ヘッドであることが図や文字により示され、カーボン複合構造により、飛距離の増大等の効果を発揮することが記載されている。ゴルフクラブヘッドの構造、ゴルフクラブヘッドに要求される性能などに照らし、金属製外殻部材と繊維強化プラスチック製外殻部材の接合強度を高める技術は、金属製外殻部材と繊維強化プラスチック製外殻部材からなる複合構造のゴルフクラブヘッドを製作する上で必要な技術の1つであると解される。他方、金属製外殻部材と繊維強化プラスチック製外殻部材という異種部材を接合する技術としては、特開平1−166782号公報・・・・記載の発明や特許第2562277号・・・・に係る発明など、複数の技術が本件特許出願前から存在しており、本件はそのような接合技術の1つであった。そして、原告自身は本件発明を実施しておらず、被告も被告製品の販売終了後は本件発明を実施していないことに鑑みると、金属製外殻部材と繊維強化プラスチック製外殻部材の接合強度を高める技術は、本件発明の他にも存在するものと推認される。また、被告製品のカタログ・・・・には、高性能を実現した理由として、単にチタン等の金属と炭素繊維強化プラスチックを組み合わせたことだけではなく、ヘッドの上部のみならず背面部に回り込むように炭素繊維強化プラスチックを配する構造を採り、低重心やたわみを実現したことなどが記載されているが、金属と炭素繊維強化プラスチックの接合方法については、本件発明を含め、特段の記載はない。さらに、ゴルフクラブの性能には、ヘッドのみならず、シャフトなど他の部分の構造、性能も大きく影響するものと推認される。なお、甲3(サイト注『実施料率』第5版 発明協会発行)には『木製品・皮製品・貴金属製品・レジャー用品』の平均実施料率について5.9%と記載され、甲4(サイト注『特許管理』第2巻第2号 日本特許協会発行)には『健康器具』の平均実施料率について6.5%と記載されているが『木製品・皮製品・貴金属製品・レジャー用品』、『健康器具』に含まれる製品の種類は多く、それらの数字は、ゴルフクラブの実施料率として直ちに採用できるものではない」、「以上の諸事情を総合考慮すると、本件発明の実施料率は、売上額の3%とするのが相当である」、補償金額は、警告後本件特許の設定登録までの売上額3億8617万2500円に実施料率3%を乗じた4158万5175円であると認められる」と述べている。

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