東京地裁(平成22年7月8日)“記録光学系事件”は、「被告は、自らLBP及びMFP等を製造販売しながらも、希望する企業があれば、本件発明を有償で実施許諾するとの方針を採用し、LBP及びMFP等を製造販売する業者の多くとライセンスバック付き有償包括ライセンス契約(ライセンスバック契約)を締結し、本件発明の実施を許諾しており、他社においても高い割合で本件発明が実施されているものであるが、一方で、それはあくまでも有償であることを前提としているのに対し、自社製品については実施料を支払う必要がないこと、全ての他社において本件発明が実施されているとまでは認められない上、代替技術についても、本件特許の存続期間内において、本件発明を明らかに上回る技術があったとまでは認められないことなどを総合すると、被告は、本件発明の自己実施により一定限度の超過利益を得ているものと考えられる。被告の本件発明の自己実施により受けるべき利益の額は、被告による自己実施に係る分を仮に第三者に実施許諾をしたと想定した場合に得られる実施料(仮装実施料)の額から法定通常実施権による減額を考慮した金額をもって超過利益の額とし、これに基づいて相当の対価の額を算定することも許されると解する。そして、・・・・@被告は、全世界生産台数のうち、相当程度のシェアを占めており、被告製品において本件発明が実施されている割合は、69.23%であること、A仮想実施料率は、既に認定した第三者にライセンスした場合の実施料率(標準包括ライセンス料率×本件発明の寄与度)とほぼ同様に考えることができると解されること、B本件発明の代替技術の内容、C被告以外の全他社を基準とするライセンシーの販売シェアが相当程度になること(LBPにつき85.64%、MFP等につき82.45%。・・・・)、その他諸般の事情を勘案すると、本件発明においては法定通常実施権減額分を90%(サイト注:超過売上率10%)とするのが相当である」と述べている。 |