知財高裁(平成22年9月22日)“無機質繊維強化炭素複合材料用の柔軟性中間材事件”は、「発明とは、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの(特許法2条1項)であるから、発明者とは、発明の技術的思想の創作行為を現実に担った者であって、発明者であるためには、当該発明の技術的思想の特徴的部分を着想し、それを具体化することに関与したことを要するものと解され、当該発明について、例えば、一般的な助言・指導を与えた者、協力者・補助者として研究者の指示に従って単にデータをとりまとめた者、実験を行った者などのように、発明の完成を援助したにすぎない者は発明者には当たらない。もとより、発明者となるためには、1人の者がすべての過程に関与することが必要なわけではなく、共同で関与することでも足りるが、複数の者が共同発明者となるためには、課題を解決するための着想及びその具体化の過程において、一体的・連続的な協力関係の下に、それぞれが重要な貢献を行うことを要するというべきである」、「事実によると、Bが、昭和59年9月に発表された論文集におけるEらの発表・・・・を読み、バルクメソフェーズ粒にピッチコークス又は石油コークス粉末を混合したものをC/C複合材料のマトリックスとして使用できることを知り、炭素繊維の間にバインダーピッチ粉末とコークス粉末のマトリックスを含有させた混合繊維束の周囲に熱可塑性樹脂からなる柔軟なスリーブを設けた構成により、C/C複合材料用の柔軟性中間材を構成することができると考えたとの被控訴人の主張に矛盾するところはなく、他方、本件各発明の特徴的部分である公知技術であった構成要件A、B及びDと同Cとの組合せという観点については、控訴人からの着想の提供を認めることはできず、また、その具体化についても、控訴人が協力者・補助者として実験を行うなどして発明の完成を援助したことを超えて重要な貢献を行ったと認めるに十分ではない」、「以上によると、控訴人が本件各発明の単独発明者であることはもとより共同発明者であったとも認められない」と述べている。 |