知財高裁(平成3年22日)“環状アミン誘導体事件軽度及び中等度アルツハイマー型認知症と高度アルツハイマー型認知症との差異は、緩やかにかつ不可逆的に進行するアルツハイマー型認知症の重症度による差異であると解されるところ、塩酸ドネペジルが軽度及び中等度アルツハイマー型認知症症状の進行抑制に有効かつ安全であることが確認されていたとしても、より重症である高度アルツハイマー型認知症症状の進行抑制に有効かつ安全であるとするには、高度アルツハイマー型認知症の患者を対象に塩酸ドネペジルを投与し、その有効性及び安全性を確認するための臨床試験が必要であったと認められる。そして『用途』とは『使いみち。用いどころ』を意味するものであり、医薬品の『用途』とは医薬品が作用して効能又は効果を奏する対象となる疾患や病症等をいうと解され『用途』の同一性は、医薬品製造販売承認事項一部変更承認書等の記載から形式的に決するのではなく、先の承認処分と本件承認処分に係る医薬品の適用対象となる疾患の病態(病態生理、薬理作用、症状等を考慮して実質的に決すべきであると解されるところ、本件のように、対象となる疾患がアルツハイマー型認知症であり、薬理作用はアセチルコリンセルテラーゼの阻害という点では同じでも、先の承認処分と後の処分との間でその重症度に違いがあり、先の承認処分では承認されていないより重症の疾患部分の有効性・安全性確認のために別途臨床試験が必要な場合には、特許発明の実施について安全性の確保等を目的とする法律の規定による許可その他の処分であって政令で定めるものを受ける必要があった場合に該当するものとして、重症度による用途の差異を認めることができるというべきである。よって、本件においては、・・・・疾患としては1つのものとして認められるとしても、用途についてみれば、先の承認処分における用途である『軽度及び中等度アルツハイマー型認知症における認知症症状の進行抑制』と本件承認処分における用途である『高度アルツハイマー型認知症における認知症症状の進行抑制』が実質的に同一であるといえないとして、存続期間の延長登録無効審判請求を不成立とした審決は、その判断の結論において誤りはない」と述べている。

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