知財高裁(平成3年28日)“記録媒体用ディスクの収納ケース事件本件無効審判においては、甲1ないし8に記載された公知技術に基づく容易想到性が無効審判請求の理由とされており、甲1ないし2の特許公報等は、審判において証拠として提出されておらず、甲1ないし2に記載された公知技術との対比における進歩性欠如等の無効原因は、本件無効審判で審理判断されていないから、その無効原因を本訴において新たに主張することは許されない。また、仮に甲1ないし2の特許公報等に記載された技術が周知技術といえるものであったとしても、それらの特許公報等は、その内容に照らすと、容易想到性を判断するに当たり、本件無効審判で提出されていた甲1ないし8等に記載された公知技術を単に補うにとどまるものではなく、別途、容易想到性を基礎付ける公知技術を示すものと解されるから、その点からしても、甲1ないし2の特許公報等に記載された技術に基づく進歩性欠如等の無効原因を本訴において新たに主張することは許されない。したがって、原告の上記主張は、その前提において、採用することができず、それを前提とするその余の原告の主張も、採用することができない」、本件無効審判においては、甲1ないし8に記載された公知技術に基づく容易想到性が無効審判の請求の理由とされていた。他方、甲3ないし5、8ないし0の特許公報等は、仮にそれらに記載された技術が周知技術といえるものであったとしても、それらの内容に照らすと、相違点4に係る訂正発明2の構成、相違点5に係る訂正発明3の構成の容易想到性を判断するに当たり、甲1ないし8に記載された公知技術を単に補うにとどまるものではなく、それとは別に、容易想到性を基礎付ける公知技術を示すものと解される。そのため、本件無効審判においては、請求の理由の補正が許されない限り、甲3ないし5、8ないし0の特許公報等に記載された技術に基づく進歩性欠如等の無効理由を主張することは許されなかった。しかし、相違点4に係る訂正発明2の構成、相違点5に係る訂正発明3の構成は、本件訂正により追加、変更されたものではなかったから、甲3ないし5、8ないし0の特許公報等に記載された技術に基づく進歩性欠如等の無効理由を追加するとの無効審判請求の理由の補正は、訂正請求によって補正の必要が生じたものではなく、請求の理由の補正として許容される余地はなかった(特許法131条の2第2項1号参照。したがって、本件無効審判においては、甲3ないし5、8ないし0の特許公報等に記載された技術に基づく進歩性欠如等の無効理由の判断をすることができなかったものであり、同旨の審決の判断に誤りはない。そして、本件無効審判において、甲3ないし5、8ないし0の特許公報等に記載された技術に基づく進歩性欠如等の無効理由は審理判断されていないから、その無効理由を本訴において新たに主張することは許されない」と述べている。

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