知財高裁(平成23年2月3日)“膨張弁事件”は、「引用例1及び2には、膨張弁のパワーエレメント部と樹脂製の弁本体の固定に当たり、弁本体の外周部にインサート成形した固着部材に雄ねじを、上端部が屈曲した筒状の連結部材の内側には雌ねじを、それぞれ形成して、両者をねじ結合により螺着させるという本件補正発明の相違点2に係る構成を採用するに足りる動機付け又は示唆がない。むしろ、引用発明は、それに先行する本件先行発明の弁本体が金属製であることによる問題点を解決するためにこれを樹脂製に改め、併せてパワーエレメント部と弁本体とを螺着によって固定していた本件先行発明の有する課題を解決するため、ねじ結合による螺着という方法を積極的に排斥してかしめ固定という方法を採用したものであるから、引用発明には、弁本体を樹脂製としつつも、パワーエレメント部と弁本体の固定に当たりねじ結合による螺着という方法を採用することについて阻害事由がある。しかも、本件補正発明は、上記相違点2に係る構成を採用することによって、パワーエレメント部の固定に強度不足という問題が発生せず、膨張弁の動作に不具合が生じるおそれもなく、またその強度不足によって生ずる水分の侵入により不都合が生じるというおそれも発生しないという作用効果(作用効果1)を発揮することで、引用発明が有する技術的課題を解決するものである。したがって、当業者は、引用発明、本件オリフィス構成、甲8技術及び周知技術に基づいたとしても、引用発明について相違点2に係る構成を採用することを容易に想到することができなかったものというべきである」と述べている。 |